企業のマイナンバー対応への準備事項
個人番号関係事務実施者である事業者が、2015年内に対応すべきことと、2016年以降に対応すべきことを列挙する。
なお、これらを実現していくためには、企業内で(次のマイナンバー対応①~⑨ごとに)目的意識が統一されたチームの編成が必要である。
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マイナンバー対応①「マイナンバー関連業務の洗い出し」
さまざまな業務のうち、業務フローを整理することでどの業務がマイナンバー制度と関係しているかについて洗い出す。マイナンバー制度は、マイナンバー法で規定された利用目的以外の利用はできない。マイナンバー法第9条(別表第一)に列挙された事務のうち、自社従業員や支払先に関して、個人番号が記載される事務を調査する。具体的には、以下のとおりである。
番号関連業務の洗い出し
○自社従業員に関する事務
従業員に関する行政機関への手続きで、個人番号を記載する事務について洗い出しを行う。該当する事務の代表的なものは、源泉徴収票の作成事務である。この他にも健康保険組合、年金事務所、ハローワークなどへの申請、届け出に関する提出書類への個人番号の記載が必要になる。
自社の申請や届け出業務でどのような業務が該当するかをチェックする。
○支払い(取引先)に関する事務
所得税法で規定されている支払調書の提出要件にかかわる支払いがあるかどうかをチェックする。自社の支払業務で、通常期にどのような支払調書を作成する支払先があるのかを確認する必要がある。
○株主に関する事務
2016年1月1日以降、株主に対して配当や剰余金の分配などを行った場合の「配当、剰余金の分配および基金利息」の支払調書の作成にあたっては、個人番号を記載して税務署に提出しなくてはならない。
ただし、本年中に株主となっている既存の株主に対しての配当金などの支払いに対しては経過措置がある。
○金融機関の場合
法定調書の提出義務がある支払いについて確認し、その中で経過措置の適用になる支払い、経過措置の適用とならない支払いについて分類する必要がある。
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マイナンバー対応②「社内規程・体制の整備」
マイナンバー制度と関連する業務についての作業手順を決め、事務処理にかかわる規程および業務フローを作成する。
規程は、基本方針、取扱規程、個人情報の利用目的の追加・通知、委託契約の整備などが必要となる。
事務処理にあたっては特に個人番号の収集、本人確認、システムへの入力、特定個人情報ファイルの作成、特定個人情報ファイルの保存方法などについて詳細を決めていく。
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マイナンバー対応③「安全管理の方法の検討」
特定個人情報ファイルは、保管にあたり安全管理の措置が義務づけられている。特定個人情報を保存する場合の事務処理を詳細に決定し、個人番号が含まれた、企業が保有する特定個人情報の漏えいを防止するための安全管理措置の方法について検討する。ガイドラインにもとづき、組織的安全管理措置、人的安全管理措置、物理的安全管理措置、技術的安全管理措置を整備する。
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マイナンバー対応④「システムの改修作業検討」
マイナンバーと関連するシステムは、個人番号、法人番号を安全に保存、管理することができ、かつ行政機関の手続きに番号が記載されるように改修する。2016年1月1日以降からの業務に対応するよう、人事・給与計算システム、法定調書システムなどマイナンバーに関連するシステムを洗い出し、システムの改修作業や出力帳票などの変更作業を行う。
給与計算や法定調書などのシステムに市販パッケージソフトなどを使用している場合、開発・販売している事業者からマイナンバー関連の改修内容や対応指針などをヒアリングすることが望ましい。
また、特定個人情報として収集された従業員や取引先などの個人番号が専用のデータペースなどに、安全に管理ができるようなシステム設計なども検討する。システムベンダーに従業員などの本人確認や特定個人情報の保存や廃棄などを委託する場合は、ガイドラインにもとづく委託先の選定基準に合致したシステムベンダーを選定する。
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マイナンバー対応⑤「社員の教育・システム研修」
2015年10月からは社員の住所地宛に個人番号の通知がされている。そのため、2015年中には社員などに対してマイナンバー法の概要や会社の業務にあたっての個人番号の取扱いについての研修・教育を実施する。
また全社員への研修・教育とは別に、会社の規程や方針を策定する幹部に対しては、マイナンバー法に関する事業者の責任などについての研修を行い、組織としての体制を整えておく。
なお、特定個人情報保護委員会の「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」によると、事業者がマイナンバーを適正に取り扱うためには、経営者自らが特定個人情報に対する保護挌置(利用制限、安全管理措置、提供制限)の重要性について十分な認識を持ち、適切な経営管理を行うことが重要とされており、経営者自らマイナンバー法を理解することが求められている。
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マイナンバー対応⑥「従業員からの番号の収集」
従業員からの個人番号の収集は、2015年の年末調整を行う時期に、従業員が人事・総務部門に提出する「平成28年分扶養控除等申告書」の提出時から始まる。
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マイナンバー対応⑦「特定個人情報ファイルの作成」
従業員から収集した個人番号は、安全に管理されたデータベースなどに入力しなければならない。個人番号と個人が特定できる情報、たとえば社員番号が紐づけられたデータは、特定個人情報となり、そのデータファイルは、特定個人情報ファイルとなる。特定個人情報ファイルは、情報漏えい防止のために、安全管理措置を取ることになっている。
この特定個人情報ファイルと特定個人情報のデータベースをどのように構築していくかの検討も必要である。従業員などから収集した番号は、一度番号を収集すれば雇用関係があるかぎり、長期にわたり企業内で使用されるものである。個人番号を収集した段階で、12桁の番号を間違いなく入力して、慎重に取り扱う。
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マイナンバー対応⑧「個人番号・法人番号による行政への手続き」
2016年1月1日以降の税務署などへ提出する税に関する手続き、社会保険料関係の手続きどには、個人番号、法人番号を手続き書類に記載する。
改修された情報システムや給与計算ソフトを使用し、行政機関への手続きに必要な個人番号、法人番号が記入できるようにするための、手続きマニュアルも必要である。
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マイナンバー対応⑨「特定個人情報の保管・安全管理」
支払先や従業員から収集した個人番号は、安全に管理する措置が義務づけられているが、これらのデータや書類を、どこで、どのように保存・保管するか、詳細な手順を決めた業務フローや規程・マニュアルなどを作成する。
また、業務フローや規程などの運用のチェックや事務委託先の管理・監督なども行っていく。
(※ 平成27年11月時点で執筆しております。その後の法改正にご留意ください。)
- マイナンバー制度とは
- マイナンバー法の目的
- マイナンバー制度のメリット
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- マイナンバー制度の3つのしくみ
- 個人番号の付番方法
- 「通知カード」と「個人番号カード」
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