【経営なんでもQ&A】 7ページ 遅刻を繰り返す社員への減給は違法?

Q 理由がはっきりせず、何度も遅刻を繰り返す従業員がいます。対応をせずに放っておくと、不公平感からほかの従業員にも影響がありそうで困っています。このまま続くようであれば減給や解雇も考えていますが、法的に問題はないのでしょうか? また、会社としてどのような対処をすればよいでしょうか?

A 遅刻は雇用契約違反になるため、減給や解雇を行うことは十分に考えられます。しかし、注意や指導を行わずにいきなり懲戒解雇にしたり、遅刻の理由をきちんと確認せずに処分したりしてしまうと、裁判やトラブルに発展するおそれがあるので避けましょう。段階を追って、適切な対応を行っていくことが大切です。

ノーワーク・ノーペイの原則

 従業員は始業時間に出勤する義務を負っているため、遅刻は雇用契約違反となります。また“ノーワーク・ノーペイの原則”といい、会社は従業員が所定の時間働いたことに対して賃金を支払う義務がありますが、働いていない時間の分は支払う必要がありません。このことから、遅刻した時間分を減額することができます。

 そして、遅刻の回数や態度などが悪質である場合には、厳しい対応を考えなければなりません。対処しないで放置することは、周囲の従業員のやる気を削いでしまいます。
 遅刻を繰り返す従業員に対しては、注意指導を行い、改善が見られない場合は、懲戒処分を検討することになります。

減給の上限は賃金総額の10分の1まで

 懲戒処分の対応は、おおむね以下のような段階を追って行います。
 口頭での反省を求める“戒告”、書面(始末書)での反省を求める“譴責(けんせき)”などの軽い処分を行い、さらに続くようであれば、“出勤停止”“減給”などの重い処分とし、最後に解雇という順番です。

 懲戒処分として減給する場合は、労働基準法第91条によって上限が決められており、1回につき平均賃金の1日分の半額まで、総額では一賃金支払期の総額の10分の1までとなっています。
 減給処分の具体的な金額を計算してみます。
 まず、1回についての減給額です。
 直近3カ月間の賃金総額(時間外手当や通勤手当を含む)の合計が90万円、3カ月の合計歴日数を90日とした場合、1日の金額は1万円(90万円÷90日)になりますので、その半額の5, 000円が1回の減額の上限になります。
 次に同賃金計算期間内に何回も減給処分があった場合の上限額の計算です。賃金総額を月30万円とした場合、10分の1までとなりますので、最大3万円までの減給になります。

段階を追って書面で証拠を残す

 注意指導の経過途中で、なぜ遅刻をするのか、従業員に確認する機会を設けます。パワハラや病気などが原因となっている場合は、“労災”や“休職命令”といった対応が必要となるからです。
 また、出退勤の管理は日頃から確実に行いましょう。注意指導に関しても、注意指導書などを作成し、書面で残しておくようにします。順序を追って改善を促したという証拠になります。いずれにしても解雇は最後の手段とし、まずは注意指導や懲戒処分によって改善を促し、前向きな対応を探ってみましょう。 
 なお、懲戒処分を行うのは、就業規則にあらかじめ定めてある場合に限りますので、ご注意ください。

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