【社長が知っておきたい法務講座】 5ページ 従業員の解雇とは違う?取締役を解任するときの注意点
経営ビジョンの違い、不正行為、能力不足などの要因で、取締役の解任を検討するケースがあるかもしれません。このときに念頭に置いておかなければならないのは、“取締役の解任には大きなリスクが伴う”ということです。今回は、取締役を解任する方法と、解任する際の注意点について解説します。
取締役は正当な理由なく解任できる
従業員を解雇する場合、無断欠勤を繰り返しているなどの、解雇する“正当な理由”が必要ですが、取締役の解任には正当な理由は必要ありません。
取締役の解任については、会社法339条1項で、『役員…は、いつでも株主総会の決議によって解任することができる』と定められており、不正行為や能力不足などの正当な理由は必要ありません。
ただし、原則として、株主総会決議において『議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席者の過半数の賛成』が必要となります。なお、定款で『決議権を持つ株主の3分の2以上の賛成が必要』など、取締役の解任に関する取り決めをしてある場合はこの限りではないため、定款を確認する必要があります。
では、正当な理由が必要ないからといって、どのようなケースでも取締役を解任してもよいのかといえば、そうではありません。正当な理由なく解任した場合、相手の取締役から損害賠償を請求されることがあります。会社法339条2項では、『解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、
株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる』と定められています。請求できるものには、任期満了まで取締役を務めていれば得られたはずの報酬や、退職金などがあります。
取締役解任の“正当な理由”とは?
では、取締役を解任するにあたり、“正当な理由”として認められやすいケースと認められにくいケースを見ていきます。
■正当な理由と認められやすいケース
・その取締役に心身の故障が認められる
・横領や背信などにより会社に損害を与えた
・取締役としての職務遂行能力が欠けている
・重大な経営判断においてミスをした
■正当な理由と認められにくいケース
・「社長がその取締役と馬が合わない」などの感情的な理由
・ほかの取締役を迎え入れるために解任したい
会社法で解任の要件として『正当な理由は必要なし』とされていても、実際は社会通念上、妥当な理由が必要なことがわかります。取締役の解任に伴う会社のリスクを低減させたいのであれば、解任よりも辞任の方向で進めるほうがよいでしょう。
いずれにせよ、不適切な対応は会社のリスクとなる恐れがあるため、慎重に進めることが肝要です。
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