【経営なんでもQ&A】 7ページ 貢献度の高い社員にパワハラの疑い 会社として、取るべき対応とは?

Q 若手社員からパワーハラスメント(パワハラ)について相談を受けました。どうも管理職に就いている50代の男性社員が行っているようです。その社員は長年我が社に貢献してくれている人物で、人となりもよく知っているだけに、指導をするのはためらわれます。どう対応するのが最も効果的でしょうか?

A もしパワハラが事実だった場合を考えれば、会社として放置したり、必要な指導をためらったりすることは禁物です。できる限り迅速に調査をして事態を把握し、対応を協議しましょう。また、被害を訴えている社員には、「会社としてしっかり対応する」という態度を示すことも大切です。

誠実な対応こそが、会社を救う!

 2018年6月、厚生労働省が公表した最新の『個別労働紛争解決制度施行状況』によれば、前年度に都道府県労働局に寄せられた、職場における『いじめ・嫌がらせ』(パワハラ)の相談は、7万2,067件と6年連続トップの結果に。職場のパワハラがなくならない理由の一つには、今回の相談のように、加害者として名指しされた人物が会社への貢献度が高く、ことを荒立てづらいというケースもあげられるのではないでしょうか。
 しかし、会社が被害報告を受けたにもかかわらず何も動かなければ、そのパワハラが事実だった場合、会社として被害をもみ消したことになり、加害者のパワハラも継続することになります。このことがいずれインターネットなどで外部に伝わることにでもなれば、会社のイメージダウンはまぬがれません。
 その人物の貢献は評価したうえで、パワハラの疑いがあれば誠実に調査して、事実であれば責任を追及する。この姿勢が、ひいては会社自身をリスクから守るものといえるでしょう。

パワハラ放置は安全配慮義務違反

 まずは、迅速な行動が肝心です。関係者それぞれ別々に席を設け、事情を聴きましょう。被害を訴えている社員に対しては、パワハラ行為について「その程度のことで?」といった言葉は慎み、「会社としてしっかり対応する」という態度を示して、信頼関係の構築に努めます。
 聞き取りのうえ、もしパワハラが事実と確認されれば、加害者へのペナルティはもちろん、被害者のケアや配置転換など、適切な処分を行います。
 労働契約法第5条で、企業には従業員の安全と健康に配慮する『安全配慮義務』が定められています。パワハラが社内で解決できなかったり、被害の程度が大きい場合、被害者は、パワハラの加害者へ脅迫や傷害、名誉棄損などの法的責任を問うことはもちろん、加害を止めなかった会社に対しても安全配慮義務を怠った使用者責任が問われることがあります。

 たとえば2010年、上司のパワハラ被害を受けたA社の社員3名が、上司に不法行為、会社に使用者責任に基づく賠償責任請求をした裁判で、東京地裁は上告それぞれに10万円~60万円の慰謝料や治療費の支払いを命じました。また2018年、名古屋高裁は、社員の自殺は職場のパワハラによるものとして、会社と先輩社員に対し約5,500万円の支払いを命じる二審判決を確定しています。
 被害はさまざまでも、間違いなく被害者の心身にダメージを与えるパワハラ。「絶対に許されない」という意識を社内で共有し、社内規定の見直しなど、パワハラの再発防止に取り組んでいきましょう。

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