【社長が知っておきたい法務講座】 5ページ 捜査機関に顧客情報の開示を求められたら?

会員登録してカードをつくり、商品の購入に応じてポイントがたまるサービスは昔からありますが、現在は、ネットの買い物でも会員登録が必須の場合が多くなっています。この会員登録で企業が取得した個人情報を、警察や検察が求めるケースが増えてきました。

捜査機関に協力を求められたら?

 小売業など個人を対象にして業務を展開する企業にとって、顧客の会員化は大切なことです。顧客の固定化にも有効ですし、ネット店舗を経営する企業であれば、顧客の購買データを利用してさらなる購入を
促すこともできます。
 今、警察や検察が、これら顧客の個人情報データを事件捜査に利用しようと、企業に対し任意提供を求めてくるということが増えています。このような場合、企業はどう対応すればよいのでしょうか?
 捜査機関が企業に個人情報などの捜査関係事項の照会を求めることは、法律で認められた手続きです
(刑事訴訟法第197条2項)。この場合、企業はあらかじめ本人の同意を得なくても個人情報を開示する
ことは可能です(個人情報保護法第23条)。
 ただし、企業側は回答を義務づけられているわけではありません。あくまでも任意に回答してもよいと
いうだけですので、捜査関係事項照会を求められたからといってむやみに回答することは、個人情報保護法には反さなかったとしても、憲法上認められる個人のプライバシー権などを無視したとして、損害賠償などの法的責任を負う可能性もあります。

企業によって異なる捜査機関への対応

 では、大手企業の場合は、個人情報の照会要求にどう対応しているのでしょうか? いくつかの例をご紹介します。

 約6,800万人の会員を擁するポイントカード“Tカード”を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)では、以前は令状の提示があった場合に限り協力していましたが、2012年以降、捜査関係事項照会書があれば『社会的責任を果たすため』に個人情報を開示するようにしました。
 同社は個人情報保護方針を改訂したうえで、会員規約に明記することも明言しています。

 “dポイントカード”を展開するNTTドコモでは、『捜査関係事項照会によって情報を提供することはあるが、“通信の秘密(利用者の通信履歴や位置情報など)”については、令状なしでの提供はあり得ない』と、段階的な対応をとっています。

 携帯電話、PC向けの通話やテキストチャットのサービスを提供するLINEでは、『事件解決や人命保護の観点から、必要と思われる容疑者や被害者の情報を提供する』としています。

 このように、大手企業の対応といっても、業種や方針によってさまざまです。しかし、いずれの企業も、一定のポリシーに従って情報開示の対応をしているといえます。
 これまで捜査機関からの照会を受けていなくても、今後、任意提供を求められたときのために、個人情報の取り扱いに関する指針を定めておくことをおすすめします。

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