【労務ワンポイントコラム】 4ページ 勤務中なのにあらぬ場所に!GPSでの労働者の管理は違法?

企業にとって、従業員の行動管理は一つの課題といえます。携帯電話の多くの機種についているGPS機能を使えば、持ち主の居場所を瞬時に把握することはできるわけですが、このGPS機能を労務管理に利用することは法的に可能なのでしょうか?

業務時間内であればGPSによる管理は適法

 手が回らなくなるほど仕事が増えることは経営者にとってはありがたいことですが、それに伴い従業員
の数が増えれば増えるほど、その管理には頭を悩ますところです。そんなとき、「会社で支給している携帯電話のGPS機能で管理ができれば……」と考えたことはありませんか? 
 また、最近の傾向としては、4月から施行された働き方改革関連法(労働安全衛生法の改正)により、労働時間の状況の把握が企業に義務づけられました。これを受け、特に営業職など会社以外で働く従業員にも勤怠管理システムを導入して労働時間を把握する企業が増えています。
 
 GPSで従業員の行動を管理・把握することは、企業の監督権限、業務命令権限の行使として適法とされています。ただし、それには一定の条件があります。
 まず、管理する時間を業務時間内に限定すること。従業員には、就業時間内は業務に専念することが義務づけられています。これを“職務専念義務”といいます。本来、公務員法のみに明文化された規定で、民間企業にこのような法律はありませんが、労働契約上、当然の義務として最高裁判例も出ています。

GPSで労務管理を行うメリット・デメリット

 GPSで従業員を管理すると、どういったメリットが得られるのでしょうか。
 まず、職務専念義務違反の防止があげられます。また、人手の足りない店舗へ近くにいる人員を配置す
るといったことも容易になり、業務効率が向上します。そのほか、商品納入の際に交通事情などで遅れるといった場合の運行状況の把握、残業代を請求された場合の勤怠管理など、考えられるメリットは多くあります。
 もちろん、デメリットがないわけではありません。なんといっても従業員から反発される可能性が高い
でしょう。絶えず監視されているような状態は従業員に圧力を与えることになるため、モチベーションの
低下につながり、業務に支障をきたすおそれも出てきます。従業員には目的をよく説明し、理解を得る必要があります。また、居場所がわかるからといって細かくチェックをして口を出しすぎるのも、従業員を萎縮させてしまいます。
 このほかのデメリットとしては、GPS機能により労働時間を簡単に把握できる場合、実働時間にかかわらず見なし時間分を労働時間とする“事業場外労働のみなし労働時間制”を採用することができません。勤怠管理をしたうえで残業代を払っていない場合は、未払い残業代の請求を受ける可能性も十分にあり得ます。

 当然ですが、GPS機能を利用する目的が労務管理であることが大前提です。それ以外の場合は、ハラス
メントを疑われたり、プライバシーの侵害を訴えられたりと、労働問題に発展しかねません。過去には“プライバシーの侵害”と判断された裁判例もあります。
 GPSによる労務管理を導入する際はメリット・デメリットをよく考え、トラブルに発展しないよう取り扱いに注意を払いましょう。

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