【社長が知っておきたい法務講座】 5ページ 関係性がなくても、自社商品としての商標登録は可能?
商標登録の出願トラブルのなかには、長年使い続けてきた名称が使えなくなったり、無関係な他者が、名称のみならず、ロゴや商品コンセプトまでそっくり登録するようなケースもあります。今回は実際に起こった二つの事例をふまえ、企業における法務的な問題と商標出願についてご紹介します。
後発の同業者が商標権を獲得?
1965年に愛知県で誕生した『キリンラーメン』は、ご当地ラーメンとして長く親しまれていましたが、商標登録はしていませんでした。1996年、キリンビールが穀物加工品を指定商品として『キリン』を商標登録しました。2014年、キリンラーメン製造元はキリンビールに対し『キリン』の商標権不使用取り消し審判を請求しました。
しかし、キリンラーメンが製造販売を一度停止していたことなども理由となって、係争の末、請求は棄却。キリンラーメンの商標は二度と使えなくなってしまいました。
また、2012年にシンガポールで設立したティラミス専門店『ティラミスヒーロー』は、日本でも2013年頃より百貨店などに登場し、人気を博していました。2018年、日本で設立した『Hero’s』というティラミス専門店は、商標登録したロゴや商品コンセプトが『ティラミスヒーロー』そっくりで、『ティラミスヒーロー』は、日本では別の名称での商品展開を余儀なくされることとなってしまいました。
権利は“いち早く出願した方”に
この二つのケースからわかるように、先に出願さえすれば、第三者でも、その商標の権利者になれるという点は、日本の商標登録制度の大きな特徴といえます。
日本国内での商標登録は、先願主義、つまり“早い者勝ち”が原則です。商標法で、商標権者になることができるのは、先に特許庁に商標についての権利申請をした人と決められているためです(第8条)。
そのため、キリンラーメンのように何十年も前からその名前を使用していても、ティラミスヒーローの
ように他国で人気ブランドを築き上げていても、先に日本の特許庁に出願申請していなければ、日本での
商標権者になることはできないのです。
とはいえ、キリンラーメンには長年愛された名称を惜しむ声が集まり、ティラミスヒーローとHero’sの
場合は、Hero’sへの非難が殺到しました。商標出願自体に法的な問題はなくとも、他者が企業努力で生み
出した価値を乗っ取ったと解釈されかねない行為が消費者の感情を刺激したといえるでしょう。
商標登録は、トラブルが起きないことを確認し、そして、できるだけ早く申請するようにしたいものです。
- 【労務ワンポイントコラム】 4ページ 業績アップにつながる!?社員のモチベーションを上げる施策とは
- 【経営トピックス】 1ページ 中小企業庁による企業の海外進出支援にはどのようなものがある?
- 【データで見る経営】 2ページ 会社の規模&業種で有給取得日数に格差労働環境を改善するためには?
- 【税務・会計2分セミナー】 3ページ 減税効果が高い3つの『特別減税制度』とは?
- 【社長が知っておきたい法務講座】 5ページ 関係性がなくても、自社商品としての商標登録は可能?
- 【増客・増収のヒント】 6ページ 特許収入で黒字になった山口大学の経営施策とは?
- 【経営なんでもQ&A】 7ページ リース契約の詐欺に遭ってしまったらどう対処すればいい?
新着情報・セミナー情報
-
セミナー情報
-
お知らせ
-
お知らせ
-
お知らせ
-
セミナー情報