【経営トピックス】 1ページ 何もせずに高報酬?大きなリスクを伴う“取締役の名義貸し”
その会社の経営には関与せず肩書だけの取締役に就任する、いわゆる『名義貸し』が行われることがあります。名義貸しの依頼者はメリットを語ってくるでしょうが、もちろんノーリスクではありません。今回は、取締役の名義貸しを引き受けた場合のリスクについて、お伝えします。
設立する本人が登録できないさまざまな事情
2006年5月、旧来の会社法を取りまとめて『新会社法』が施行されました。現代の経済情勢の変化を汲み、会社のありかたを新しく規定する法制度です。
これによって、それまで取締役が3人いないと株式会社を設立できなかったところ、会計監査人を置かない場合は取締役1人で設立が可能になりました。
1人でも会社を設立できるようになったのですから、本来は設立する本人が取締役になればよいだけの
ように思われますが、取締役の名義貸しは今でもよく行われているようです。
名義貸しを依頼する理由としては、たとえば、複数経営している会社同士で業務提携を結ぶために一方
の社長の名前を変えておきたい場合や、業界で顔の効く人を社長に据えてイメージアップをはかりたい場合、あるいは今の会社で契約上取り扱えない商品があるため、別会社を興して業務を展開したい場合など、多種多様です。
その会社が業績順調で、知名度がすでに高かったり、どんどん上がっていくような状況であれば、役員報酬を受け取れたり、会社役員として社会的地位も向上したりするなど、名義貸しで得られるメリットは少なくないといえます。
しかし実際には、さまざまな問題が後を絶ちません。どんなことが起こり得るのか、具体例を見てみましょう。
督促から損害賠償、自己破産まで?何も知らなくても背負う責任
たとえば、会社名義で借りた事務所の家賃が滞納されれば、督促は取締役のもとにいきますし、会社が
行った取引や契約に絡む訴訟などがあると、責任を取らなくてはなりません。さらに、会社で問題が起こった場合には“任務懈怠”とみなされて株主から損害賠償を請求される可能性もあります。
これらが名義貸しをした人のあずかり知らぬところで行われたことであっても、取締役である以上逃れることはできません。名義だけの取締役であっても、自ら承諾して取締役として登記した以上は、会社の
名義で行われた取引や契約には、取締役として責任を負うことになるのが原則です。
もし会社の債務が大きくなり、取締役として自己破産に陥った場合、金融機関からの融資が受けられなくなるだけでなく、日常生活に必要不可欠なもの以外の財産は処分されてしまいますし、財産に関する調査があるため居住移転の自由もなくなります。
さらに、職業や資格についても制限を受けることになり、法律にかかわる士業や後見人などのほか、企業の取締役になることはできなくなります。後年、自分で会社を設立したいと考えたとしても、取締役として会社に参加することはできなくなるわけです。
実質経営者には影響はないまま、名義貸しした人だけが責任や負債を負う仕組みです。
このように、取締役の名義貸しには大きなリスクが伴います。事業が順調でも、経営に参加していない
以上、状況の悪化を察知できずに大きな負債を負う可能性もゼロではありません。
もし名義だけの取締役就任の話をもちかけられた場合は、起こり得るリスクと受け取るメリットのバランスを見極めて、安易な就任は避けましょう。
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