【社長が知っておきたい法務講座】 5ページ 会社のホームページに従業員の写真を掲載する際の注意点とは?

ホームページ上で、従業員の集合写真などを掲載している会社は多いと思いますが、従業員の法的権利に対する配慮は十分になされているでしょうか。今回は、従業員の写真をホームページに掲載する際の注意点について、在職中、退職後に分けて、解説していきます。

個人が特定できる写真をHP上に掲載した際の問題点は?

(1)在職中の場合
 個人が特定できる写真は個人情報にあたります。そのため、会社のホームページ上に従業員個人が特定できる写真を掲載する場合、前提として、個人情報保護法に則った対応がなされている必要があります。具体的には、従業員の個人情報を取得・利用する場合の利用目的を、あらかじめ、就業規則や雇用契約書の中で明示しておくとか、掲載の都度、同意を取得するなどの対応が必要です。そういった措置も取らずに無断で写真を掲載した場合は、個人情報保護法違反ということになります。
 また、憲法13条により認められる権利に『肖像権』があります。肖像権とは、端的にいうと、自分の容姿・容貌についてむやみに撮影されたり、公表・利用等されたりしないようにする権利のことをいいます。そのため、自社で働いている従業員でも、個人が特定できる写真を本人に無断で使用・公表等することは、その従業員の肖像権の侵害にあたるともいえます。
 もちろん、従業員本人が「ホームページで使っていい」などと同意していれば、個人情報保護法違反にも肖像権の侵害にもなりません。必ず従業員の同意を得てから、ホームページに掲載するようにしましょう。

(2)退職後の場合
 従業員の在職中に撮影した個人が特定可能な写真を、退職後に会社のホームページで使った場合、個人情報保護法違反や肖像権の侵害となるのでしょうか?
・肖像権の観点
 肖像権について考えた場合、在職中も、また、退職に際しても、従業員本人から同意を取っていないという場合は、肖像権侵害となる可能性が高いでしょう。
 『在職中に掲載同意は取っていたが、退職に際しては同意をとっていない』という場合も、通常、従業員は『在職している間は写真の掲載を許可する』という趣旨で同意をしている可能性が高いと考えられます。したがって、退職後の同意まではしていないと見るべきで、この場合も肖像権侵害の可能性が高いでしょう。
・個人情報保護法の観点
 他方、個人情報保護法の観点から見た場合、前者は、利用目的の本人への通知等がなされていないといえる場合が多いでしょうし、後者については、同意を取得した時に通知した『利用目的の範囲』を超えたものにあたるといいうるため、従業員から、個人情報保護法に違反すると主張される可能性もあります。

 実は、従業員の在職中にホームページへの掲載同意を得ていたにもかかわらず、退職後も使い続けたことで「肖像権の侵害だ」といって画像の削除や慰謝料などを請求されるケースが増えているのです。
 このようなケースにおける慰謝料の金額は、裁判でそれほど多額が認定されることは少ないかもしれませんが、元従業員の意向を無視してずっと掲載し続けたりすれば苦痛・不快感が増大し、それを慰謝料増額の事由として考慮される可能性はあります。また、そのような請求以前に、会社の対応が不当であるなどとSNSで拡散等された場合には、会社の評判・名声が低下するといったリスクも生じかねません。
 したがって、従業員の退職後も写真を掲載する可能性がある場合は、退職後の掲載同意も得ておくほうが賢明です。このとき、後から同意の有無でトラブルにならないよう、口頭ではなく書面で同意を取ることが重要になります。
 しかし、そもそも会社のホームページには、在籍している従業員の写真を掲載するのが、会社の実体に即した情報発信です。退職後の写真掲載への同意の有無にかかわらず、従業員の退職後には、なるべく早めに、従業員が特定されるような画像を削除ないし差し替えるのが穏当な対応といえるでしょう。

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