【労務ワンポイントコラム】 4ページ 従業員とのトラブルに発展させない不利益変更の注意点とは?
会社の経営状態によって、労働時間の延長や基本給の減給、手当の廃止など、社員にとって不利益となる労働条件の変更を行わざるを得ないことがあります。このような変更を『不利益変更』と呼びます。今回は、不利益変更を行う際に注意したいポイントをまとめました。
不利益変更の手順と危険性とは?
原則として、従業員の合意なく会社が一方的に不利益変更を行うことはできません。そのため、『不利
益変更』を行う際には、以下の手順が必要となります。
(1)従業員への説明と合意の獲得
会社が希望する不利益変更の内容について従業員に説明を行い、合意を得る必要があります。個別に説明を行うのが理想的ですが、労働組合がある場合は労働組合と話し合い、合意を得るという流れになります。
(2)就業規則の変更
合意を得られたら、就業規則を変更して周知し施行することになります。就業規則の届出義務がある会社は、労働基準監督署に届出を行います。
基本は上記の方法ですが、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則
の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の事情に照らして合理性が認められれば、就業規則を
変更することで全従業員の合意をとらずに不利益変更を行うことができます。しかし、この方法は裁判例
からみても容易ではなく、かつ従業員からすれば一方的に就業規則を変更されたことになりますから、下記のようなさまざまな問題を起こす危険性があります。
●従業員の士気が下がる
一方的に賃金や手当などがカットされてしまうと従業員が不信感を抱き、士気の低下につながることが予想されます。そのため、従業員同士が不満をぶつけ合い、大量の退職者が出る・顧客を抱えたまま独立
されるなどのトラブルになる可能性も否定できません。
●労使紛争
会社は合理性があると考えていたとしても、従業員から未払賃金の請求訴訟を起こされるなど、労使紛争を招くケースがあります。また、労働基準監督署に通報されて立ち入り調査を受けることも起こり得ます。
不利益変更を行う際の注意点とは?
一歩間違えれば、会社も取り返しのつかないダメージを負いかねない不利益変更。話をスムーズに進めるためには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
●従業員の心情に配慮して手順を踏む
最初から紛争を見越して弁護士を間に入れて交渉してもらう、社会保険労務士に不利益変更について通知してもらうなど、会社側としてはできるだけ手を割かずに進めたいと考えるかもしれませんが、従業員にとってはそれが『強硬な姿勢』とネガティブに映ってしまうこともあります。
従業員数が多い会社ではむずかしいかもしれませんが、可能な限り経営陣が従業員一人ひとりに対して不利益変更に関する説明を行うことで、誠意ある対応だと評価されて穏便に進めることができるのではないでしょうか。
●できるだけ不満を残さないように配慮する
単純に労働時間が延びたり、賃金や手当がカットされたりすると、従業員の間で『これまで得られていたものが得られなくなった』という不満が募ってしまいます。
そこで、不利益変更を行う代わりとして、定年を延長するとか、福利厚生を充実させるなど、従業員がメリットを感じるような代案を提案し、納得してもらうのもポイントです。
労働条件の不利益変更は、対応を誤ると、大きなトラブルに発展しかねません。その一方で、従業員の不満が最小限に抑えられるよう、誠意ある対応で進めることによって、従業員からの信頼を得られる機会でもあります。
問題なく手続きができるよう、従業員の心情などに配慮して進めていきましょう。
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